ポラーノの広場のうた(楽譜)

つめくさ灯《ひ》ともす 夜のひろば
むかしのラルゴを うたひかはし
雲をもどよもし  夜風にわすれて
とりいれまぢかに 年ようれぬ

まさしきねがひに いさかふとも
銀河のかなたに  ともにわらひ
なべてのなやみを たきゞともしつゝ、
はえある世界を  ともにつくらん


ルビは《》で示した。
※については、便宜上意図する題を編者が付した。
底本:「宮沢賢治全集7」筑摩書房(昭和60年)

ポラーノの広場のうた(ファゼーロ)

つめくさのはなの 終る夜は
ポランの広場の 秋まつり
ポランの広場の 秋のまつり
水をのまずに酒を呑む
そんなやつらが威張ってゐると
ポランの広場の 夜が明けぬ
ポランの広場も 朝にならぬ。


In the good summer time(ファゼーロ)

つめくさの花の  かをる夜は
ポランの広場の  夏まつり
ポランの広場の  夏まつり
酒くせのわるい  山猫が
黄いろのシャツで 出かけてゐると
ポランの広場に  雨がふる
ポランの広場に  雨がふる


In the good summer time(山猫博士)

つめくさの花の 咲く晩に
ポランの広場の 夏まつり
ポランの広場の 夏のまつり
酒を呑《の》まずに  水を呑む
そんなやつらが でかけて来ると
ポランの広場も 朝になる
ポランの広場も 白ぱっくれる。


フローゼントリー(ミーロ)

けさの六時ころ    ワルトラワーラの
峠をわたしが     越えようとしたら
朝霧がそのときに   ちゃうど消えかけて
一本の栗の木は    後光をだしてゐた
わたしはいたゞきの  石にこしかけて
朝めし堅ぱんを    かじりはじめたら
その栗の木がにはかに ゆすれだして
降りて来たのは    二疋の電気栗鼠《りす》
わたしは急いで……