2005-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2月の更新

自作(感人)の詩を追加 すきな ものを うたう ひょうけつ はじまりのところへ 人の弱さ 冬道程 たとえばこんな話 遠い空の果ての悲しみ 旅の分かれ目 プロフィールを編集。過去のプロフィールはこちら → 紹介 現代詩フォーラムに詩を選んで載せていこうと思…

忘れてしまつて

深い秋が訪れた!(春を含んで) 湖《みづうみ》は陽《ひ》にかがやいて光つてゐる 鳥はひろいひろい空を飛びながら 色どりのきれいな山の腹《はら》を峡《たに》の方に行く 葡萄《ぶだう》も無花果《いちじく》も豊かに熟《う》れた もう穀物の収穫ははじま…

夏の弔ひ

逝《ゆ》いた私の時たちが 私の心を金《きん》にした 傷つかぬやう傷は早く愎《なほ》るやうにと 昨日と明日との間には ふかい紺青《こんじやう》の溝がひかれて過ぎてゐる 投げて捨てたのは 涙のしみの目立つ小さい紙のきれはしだつた 泡立つ白い波のなかに…

虹とひとと

雨あがりのしづかな風がそよいでゐた あのとき 叢《くさむら》は露《つゆ》の雫《しづく》にまだ濡れて 蜘蛛《くも》の念珠《おじゆず》も光つてゐた 東の空には ゆるやかな虹がかかつてゐた 僕らはだまつて立つてゐた 黙つて! ああ何もかもあのままだ おま…

SONATINE No.2

夏花の歌

その一 空と牧場《まきば》のあひだから ひとつの雲が湧きおこり 小川の水面《すゐめん》に かげをおとす 水の底には ひとつの魚が 身をくねらせて 日に光る それはあの日の夏のこと! いつの日にか もう返らない夢のひととき 黙つた僕らは 足に藻草《もぐさ…

のちのおもひに

夢はいつもかへつて行つた 山の麓《ふもと》のさびしい村に 水引草《みづひきぐさ》に風が立ち 草ひばりのうたひやまない しづまりかへつた午《ひる》さがりの林道を うららかに青い空には陽《ひ》がてり 火山は眠つてゐた ――そして私は 見て来たものを 島々…

わかれる昼に

ゆさぶれ 青い梢を もぎとれ 青い木《こ》の実を ひとよ 昼はとほく澄みわたるので 私のかへつて行く故里《ふるさと》が どこかにとほくあるやうだ 何もみな うつとりと今は親切にしてくれる 追憶よりも淡く すこしもちがはない静かさで 単調な 浮雲と風のも…

晩き日の夕べに

大きな大きなめぐりが用意されてゐるが だれにもそれとは気づかれない 空にも 雲にも うつろふ花らにも もう心はひかれ誘はれなくなつた 夕やみの淡い色に身を沈めても それがこころよさとはもう言はない 啼《な》いてすぎる小鳥の一日も とほい物語と唄《う…

またある夜に

私らはたたずむであらう 霧のなかに 霧は山の沖にながれ 月のおもを 投箭《なげや》のやうにかすめ 私らをつつむであらう 灰の帷《とばり》のやうに 私らは別れるであらう 知ることもなしに 知られることもなく あの出会つた 雲のやうに 私らは忘れるであら…

はじめてのものに

ささやかな地異《ちい》は そのかたみに 灰を降らした この村に ひとしきり 灰はかなしい追憶のやうに 音立てて 樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた その夜《よ》 月は明《あかる》かつたが 私はひとと 窓に凭《もた》れて語りあつた(その窓からは山の姿…

SONATINE No.1

萱草に寄す

目次 SONATINE No.1 はじめてのものに またある夜に 晩き日の夕べに わかれる昼に のちのおもひに 夏花の歌 SONATINE No.2 虹とひとと 夏の弔ひ 忘れてしまつて

朝やけ

昨夜《ゆふべ》の眠りの よごれた死骸の上に 腰をかけてゐるのは だれ? その深い くらい瞳から 今また 僕の汲んでゐるものは 何ですか? こんなにも 牢屋《ひとや》めいた部屋うちを あんなに 御堂《みだう》のやうに きらめかせ はためかせ あの音楽はどこ…

さまよひ

夜だ――すべての窓に 燈《ひ》はうばはれ 道が そればかり ほのかに明《あかる》く かぎりなく つづいてゐる……それの上を行くのは 僕だ ただひとり ひとりきり 何ものをもとめるとなく 月は とうに沈みゆき あれらの やさしい音楽のやうに 微風《そよかぜ》も…

眠りのほとりに

沈黙は 青い雲のやうに やさしく 私を襲ひ…… 私は 射とめられた小さい野獣のやうに 眠りのなかに 身をたふす やがて身動きもなしに ふたたび ささやく 失はれたしらべが 春の浮雲と 小鳥と 花と 影とを 呼びかへす しかし それらはすでに私のものではない あ…

溢れひたす闇に

美しいものになら ほほゑむがよい 涙よ いつまでも かはかずにあれ 陽は 大きな景色のあちらに沈みゆき あのものがなしい 月が燃え立つた つめたい!光にかがやかされて さまよひ歩くかよわい生き者たちよ 己《おれ》は どこに住むのだらう――答へておくれ 夜…

失なはれた夜に

灼《や》けた瞳《ひとみ》が 灼けてゐた 青い眸《ひとみ》でも 茶色の瞳でも なかつた きらきらしては 僕の心を つきさした 泣かさうとでもいふやうに しかし 泣かしはしなかつた きらきら 僕を撫《な》でてゐた 甘つたれた僕の心を嘗《な》めてゐた 灼けた…

真冬の夜の雨に

あれらはどこに行つてしまつたか? なんにも持つてゐなかつたのに みんな とうになくなつてゐる どこか とほく 知らない場所へ 真冬の雨の夜《よる》は うたつてゐる 待つてゐた時とかはらぬ調子で しかし帰りはしないその調子で とほく とほい 知らない場所…

眠りの誘ひ

おやすみ やさしい顔した娘たち おやすみ やはらかな黒い髪を編んで おまへらの枕もとに胡桃《くるみ》色にともされた燭台《しよくだい》のまはりには 快活な何かが宿つてゐる(世界中はさらさらと粉の雪) 私はいつまでもうたつてゐてあげよう 私はくらい窓…

小譚詩

一人はあかりをつけることが出来た そのそばで 本をよむのは別の人だつた しづかな部屋だから 低い声が それが隅の方にまで よく聞えた(みんなはきいてゐた) 一人はあかりを消すことが出来た そのそばで 眠るのは別の人だつた 糸紡ぎの女が子守の唄をうた…

やがて秋……

やがて 秋が 来るだらう 夕ぐれが親しげに僕らにはなしかけ 樹木が老いた人たちの身ぶりのやうに あらはなかげをくらく夜《よる》の方に投げ すべてが不確かにゆらいでゐる かへつてしづかなあさい吐息《といき》にやうに…… (昨日でないばかりに それは明日…

或る風に寄せて

おまへのことでいつぱいだつた 西風《にしかぜ》よ たるんだ唄《うた》のうたひやまない 雨の昼に とざした窗《まど》のうすあかりに さびしい思ひを噛《か》みながら おぼえてゐた をののきも 顫《ふる》へも あれは見知らないものたちだ…… 夕ぐれごとに か…

暁と夕の詩

目次 Ⅰ 或る風に寄せて Ⅱ やがて秋…… Ⅲ 小譚詩 Ⅳ 眠りの誘ひ Ⅴ 真冬の夜の雨に Ⅵ 失なはれた夜に Ⅶ 溢れひたす闇に Ⅷ 眠りのほとりに Ⅸ さまよひ Ⅹ 朝やけ

跋……

チユウリツプは咲いたが 彼女は笑つてゐない 風俗のおかしみ 《花笑ふ》と 僕は 紙に書きつける ……畢【をはり】 目次に戻る ルビは【】で示した。 親本:「立原道造詩集」白凰社(昭和40年) 親本の底本:「立原道造全集」角川書店(昭和38年) 初出:手製(…

帽子

学校の帽子をかぶつた僕と黒いソフトをかぶ つた友だちが歩いてゐると、それを見たもう 一人の友だちが後になつてあのときかぶつて ゐたソフトは君に似あふといひだす。僕はソ フトなんかかぶつてゐなかつたのに、何度い つても、あのとき黒いソフトをかぶつ…

愛情

郵便切手を しやれたものに考へだす

貧乏な天使が 小鳥に変装する 枝に来て それはうたふ わざとたのしい唄を すると庭がだまされて小さい薔薇の花をつける 名前のかげで暦【こよみ】は時々ずるをする けれど 人はそれを信用する 目次に戻る

僕は

僕は 背が高い 頭の上にすぐ空がある そのせゐか 夕方が早い! 目次に戻る

田園詩

小径【こみち】が、林のなかを行つたり来たりしてゐる、 落葉を踏みながら、暮れやすい一日を。 目次に戻る