2005-02-26 真冬の夜の雨に 詩 立原道造 あれらはどこに行つてしまつたか? なんにも持つてゐなかつたのに みんな とうになくなつてゐる どこか とほく 知らない場所へ 真冬の雨の夜《よる》は うたつてゐる 待つてゐた時とかはらぬ調子で しかし帰りはしないその調子で とほく とほい 知らない場所で なくなつたものの名前を 耐へがたい つめたいひとつ繰りかへしで―― それさへ 僕は 耳をおほふ 時のあちらに あの青空の明るいこと! その望みばかりのこされた とは なぜいはう だれとも知らない その人の瞳《ひとみ》の底に? 目次に戻る