失なはれた夜に

灼《や》けた瞳《ひとみ》が 灼けてゐた
青い眸《ひとみ》でも 茶色の瞳でも
なかつた きらきらしては
僕の心を つきさした

泣かさうとでもいふやうに
しかし 泣かしはしなかつた
きらきら 僕を撫《な》でてゐた
甘つたれた僕の心を嘗《な》めてゐた

灼けた瞳は 動かなかつた
青い眸でも 茶色の瞳でも
あるかのやうに いつまでも

灼けた瞳は しづかであつた!
太陽や香のいい草のことなど忘れてしまひ
ただかなしげに きらきら きらきら 灼けてゐた

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