眠りの誘ひ
おやすみ やさしい顔した娘たち
おやすみ やはらかな黒い髪を編んで
おまへらの枕もとに胡桃《くるみ》色にともされた燭台《しよくだい》のまはりには
快活な何かが宿つてゐる(世界中はさらさらと粉の雪)
私はいつまでもうたつてゐてあげよう
私はくらい窓の外に さうして窓のうちに
それから 眠りのうちに おまへらの夢のおくに
それから くりかへしくりかへして うたつてゐてあげよう
ともし火のやうに
風のやうに 星のやうに
私の声はひとふしにあちらこちらと……
するとおまへらは 林檎《りんご》の白い花が咲き
ちいさい緑の実を結び それが快《こころよ》い速さで赤く熟《う》れるのを
短い間に 眠りながら 見たりするであらう