またある夜に

私らはたたずむであらう 霧のなかに
霧は山の沖にながれ 月のおもを
投箭《なげや》のやうにかすめ 私らをつつむであらう
灰の帷《とばり》のやうに

私らは別れるであらう 知ることもなしに
知られることもなく あの出会つた
雲のやうに 私らは忘れるであらう
水脈のやうに

その道は銀の道 私らは行くであらう
ひとりはなれ……(ひとりはひとりを
夕ぐれになぜ待つことをおぼえたか)

私らは二《ふた》たび逢はぬであらう 昔おもふ
月のかがみはあのよるをうつしてゐると
私らはただそれをくりかへすであらう

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