2005-02-27 晩き日の夕べに 詩 立原道造 大きな大きなめぐりが用意されてゐるが だれにもそれとは気づかれない 空にも 雲にも うつろふ花らにも もう心はひかれ誘はれなくなつた 夕やみの淡い色に身を沈めても それがこころよさとはもう言はない 啼《な》いてすぎる小鳥の一日も とほい物語と唄《うた》を教へるばかり しるべもなくて来た道に 道のほとりに なにをならつて 私らは立ちつくすのであらう 私らの夢はどこにめぐるのであらう ひそかに しかしいたいたしく その日も あの日も賢《かしこ》いしづかさに? 目次に戻る