さまよひ

夜だ――すべての窓に 燈《ひ》はうばはれ
道が そればかり ほのかに明《あかる》く かぎりなく
つづいてゐる……それの上を行くのは
僕だ ただひとり ひとりきり 何ものをもとめるとなく

月は とうに沈みゆき あれらの
やさしい音楽のやうに 微風《そよかぜ》もなかつたのに
ゆらいでゐた景色らも 夢と一《いつ》しよに消えた
僕は ただ 眠りのなかに より深い眠りを忘却《のうきやく》を追ふ……

いままた すべての愛情が僕に注《そそ》がれるとしたら
それを 僕の掌はささへるに あまりにうすく
それの重みに よろめきたふれるにはもう涸《かわ》ききつた!

朝やけよ!早く来い――眠りよ!覚めよ……
つめたい灰の霧にとざされ 僕らを凍《こほ》らす 粗い日が
訪れるとき さまよふ夜よ 夢よ ただ悔恨ばかりに!

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