2005-02-25から1日間の記事一覧

跋……

チユウリツプは咲いたが 彼女は笑つてゐない 風俗のおかしみ 《花笑ふ》と 僕は 紙に書きつける ……畢【をはり】 目次に戻る ルビは【】で示した。 親本:「立原道造詩集」白凰社(昭和40年) 親本の底本:「立原道造全集」角川書店(昭和38年) 初出:手製(…

帽子

学校の帽子をかぶつた僕と黒いソフトをかぶ つた友だちが歩いてゐると、それを見たもう 一人の友だちが後になつてあのときかぶつて ゐたソフトは君に似あふといひだす。僕はソ フトなんかかぶつてゐなかつたのに、何度い つても、あのとき黒いソフトをかぶつ…

愛情

郵便切手を しやれたものに考へだす

貧乏な天使が 小鳥に変装する 枝に来て それはうたふ わざとたのしい唄を すると庭がだまされて小さい薔薇の花をつける 名前のかげで暦【こよみ】は時々ずるをする けれど 人はそれを信用する 目次に戻る

僕は

僕は 背が高い 頭の上にすぐ空がある そのせゐか 夕方が早い! 目次に戻る

田園詩

小径【こみち】が、林のなかを行つたり来たりしてゐる、 落葉を踏みながら、暮れやすい一日を。 目次に戻る

旅行

この小さな駅で 鉄道の柵のまはりに 夕方がゐる 着いて僕はたそがれる だらう ……路の上にしづかな煙のにほひ 僕の一歩がそれをつきやぶる 森が見 える 畑に人がゐる この村では鴉が鳴いてゐる やがて僕は疲れた僕を固い平【たいら】な黒い寝 床に眠らせるだ…

日記

季節のなかで 太陽が 僕を染めかへる ちようど健康さうに見えるまで ……雨の日 埃だらけの本から 僕は言葉をさがし出す―― 黒つぐみ 紫陽花 墜落 ダイヤの女王【クヰーン】……… (僕は僕の言葉を見つけない!) 夜が下手にうたつてきかせた 眠られないと 僕はい…

街道【かいどう】の外れで 僕の村と 隣の村と 世間話をしてゐる 《もうぢき鶏が鳴くでせう 《これからねむい季節です その上に 昼の月が煙を吐【は】いてゐる 目次に戻る

裸の小鳥と月あかり 郵便切手とうろこ雲 引出しの中にかたつむり 影の上にはふうりんさう 太陽と彼の帆前船【ほまえせん】 黒ん坊と彼の洋燈【ランプ】 昔の絵の中に薔薇の花 僕は ひとりで 夜が ひろがる 目次に戻る

風が……

《郵便局で 日が暮れる 《果物屋の店で 灯がともる 風が時間を知らせて歩く 方々【ほうぼう】に 目次に戻る

日曜日

目次 風が…… 唄 春 日記 旅行 田園詩 僕は 暦 愛情 帽子 跋……