焦心

霜ふりてすこしつめたき朝を、
手に雲雀料理をささげつつ歩みゆく少女あり、
そのとき並木にもたれ、
白粉《おしろい》もてぬられたる女のほそき指と指との隙間《すきま》をよくよく窺ひ、
このうまき雲雀《ひばり》料理をば盗み食べんと欲して、
しきりにも焦心し、
あるひとのごときはあまりに焦心し、まつたく合掌せるにおよべり。

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