その襟足は魚である

ふかい谷間からおよぎあがる魚類のやうで
いつもしつとり濡れて青ざめてゐるながい襟足
すべすべと磨きあげた大理石の柱のやうで
まつすぐでまつ白で
それでゐて恥かしがりの襟足
このなよなよとした襟くびのみだらな曲線
いつもおしろいで塗りあげたすてきな建築
そのおしろいのねばねばと肌にねばりつく魚の感覚
またその魚類の半襟のなかでおよいでゐるありさまはどうです
ああこのなまめかしい直線のもつふしぎな誘惑
そのぬらぬらとした魚類の音楽にはたへられない
あはれ身を藻草のたぐひとなし
はやくこの奇異なる建築の柱にねばりつきたい
はやく はやく この解きがたい夢の Nymph に身をまかせて。

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