2007-02-09 鴉毛の婦人 詩 萩原朔太郎 やさしい鴉毛の婦人よ わたしの家根裏の部屋にしのんできて 麝香のなまめかしい匂ひをみたす 貴女《あなた》はふしぎな夜鳥 木製の椅子にさびしくとまつて その嘴《くちばし》は心臓《こころ》をついばみ 瞳孔《ひとみ》はしづかな涙にあふれる 夜鳥よ このせつない恋情はどこからくるか あなたの憂鬱なる衣裳をぬいで はや夜露の風に飛びされ。 目次に戻る