2007-02-09 五月の死びと 詩 萩原朔太郎 この生《いき》づくりにされたからだは きれいに しめやかに なまめかしくも彩色されてる その胸も その脣《くち》も その顔も その腕も ああ みなどこもしつとりと膏油や刷毛で塗られてゐる。 やさしい五月の死びとよ わたしは緑金の蛇のやうにのたうちながら ねばりけのあるものを感触し さうして「死」の絨毯に肌身をこすりねりつけた。 目次に戻る