2004-06-29 冬が来た 詩 高村光太郎 きつぱりと冬が来た 八つ手の白い花も消え 公孫樹《いてふ》の木も箒《はうき》になつた、 きりきりともみ込むやうな冬が来た 人にいやがられる冬 草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た 冬よ 僕に来い、僕に来い 僕は冬の力、冬は僕の餌食《ゑじき》だ しみ透《とお》れ、つきぬけ 火事を出せ、雪で埋めろ 刃物のやうな冬が来た