旅の分かれ目

タイピンを抜き、ネクタイを取る
ワイシャツのボタンを緩める

移動の車内の中
この時は曖昧な時だ
仕事から仕事先へ
人は肘掛のボタンへと
背もたれを緩める

この時をどう生きるかが旅の分かれ目だ

想像して見たまえ
窓は車内に陰を落していても
外には人っ子一人いない景色が広がっている
降り積んだ雪は次第に高まり
トンネルを抜ける度に
壁を作ってゆくのだ

悲しいことに
天井の明かりを夢見ていても
するするとゆらめくペンの様に
新聞を読んでいても
揺れ動く波の様に
パソコンを打っていても
時は過ぎ去ってしまうのだ

明日吹く風を
そこから読み取るためには
嵐が吹こうとも
のび行く波が必要だ

肘掛に乗せた両腕の
すらりと伸びる指先
その先でアーチを作り
窓の外へと弓を光らせよう

    (2005.1.25)
 秋田新幹線の車内にて