たとえばこんな話

たとえばこんな話

引き算が出来なくては ノートを足され
家で座っていたら 外に出され
空を眺めていたら ボールを当てられ
うつむいて歩くと 上を見ろと言う

教室の机のように
乱れては 直され
崩れては 立たされ
穢れて清められる
時にはみんなが
大きな渦に流れては
それが社会であると整えられる
それはとても 窮屈なこと

どうも子供にはモデルがいるらしく
合わせなければいけない
そう 子供の時に思った
人は八割ぐらいがいい
渦の真ん中はぐるぐるだし
飛魚は空を飛べない
動かされず、流れない
2割の自由
一人だけの自由は すべての方向を向く

しかし、私は家を出た
音に動く、フラワーロック

会社の上司に酒を注ぎ
(濃い目に波波と注ぎ)
社長のクドイ話聞き
(高校の校長と同じ)
見知らぬ客にお茶を入れ
(社員用とは違うのさ)
茶封筒にシール貼り
(昔内職あったなあ)
8割ぐらいで仕事をし
(そうさ世の中そのままさ)
2割ぐらいで空を眺めている
(たった2割がほんとのとこさ)

しかし私は家を出た
私はやがて社会を出て行く
少なくとも10割の空を見ている
なぜならば
人はみな、この世を去ってゆくからだ

    (2005.1.21)
 出張先の風呂場で。世捨て人になろうと思ってからもう長くたち、くだらないことを繰り返していることに嫌気が差して、消えたくなった