新宿御苑にて

タイサンボク


新宿駅の南口を出ると、携帯電話がないと友人とは落ち合えない程の人の群れが、流体状にアスファルトの地面へと流れていった。正面には車線の多い道路と、高層ビル街が立ち並んでいる。私と友人2人は、この新宿駅から新宿御苑という公園へと向かった。
私は歩いている中で、とてもこの街の中に森などあるまいと思っていたが、新宿御苑はそれなりの広さでもって、ビル街の中から突如として姿を現した。間近で見ると高く生い茂るクスノキの大木も、ビルの陰からは全く姿を覗くことができず、まさしく突如として葉叢を現した。
ここ新宿御苑は、新宿駅から歩いて10分ほどの場所にある。始まりは明治5年、時の政府が内藤家から上納された土地と買収した隣接地を合わせた58.7haの敷地に、我が国の近代農業振興を目的とする「内藤新宿試験場」を設置したことによる。内藤家の土地は、豊臣秀吉から関八州を与えられた徳川家康江戸城に入城した際に、徳川家康の小姓であった内藤清成へ与えた江戸屋敷である。
その後の明治12年、農業振興政策拡充のなかで内藤新宿試験場は、その幅広い役割の一部を他に移し、宮内省所管の「新宿植物御苑」として、皇室の御料地・農園として運営がなされた。そして戦後の昭和24年、新宿御苑皇居外苑京都御苑とともに厚生省の所管となり、「国民公園新宿御苑」として一般に開放されるようなる。なお現在は、全国の国立公園などとともに所管が環境省に移っている。
さっそく草木の茂る園内へと入場すると(有料200円)、ボランティアガイドの人たちが新宿御苑を案内するために入り口付近に集まっていた。丁度いいので私達も、その列に参加して一緒に新宿御苑を案内していただくことにした。(いつも行なわれるわけではないので希望する際には確認を)
東京の自然公園には、グリーンアドベンチャーという看板があり、いくつかの樹木の名前と特徴を示した看板が掲示されている。これは非常に便利である。実は私は花や木を眺めるのが好きではあるが名前をほとんど知らない。これは前から問題であるとは思っていたのであるが、同じようだが違う花があった場合、そのことを認識することは、木々の特徴を知っていなければ難しい問題であり、そういったことから勉強しようと思っているしだいである。そのために日ごろ、山を登っていく中で気になった木の樹皮の色・葉の形・花の色など思い出し、それを帰ってから図鑑で調べてはいるのだが、実際なかなか見つかるものではない。まして本当にそれが合っているのかはかなり怪しいものである。そのために、こういう看板で覚えて他の木をみて同じ木を探し覚えていくのは有効である。
そして今日は、ガイドの人が一緒とあって、普段図鑑を読んでいたのではわからない知識を含め、色々と教えていただいた。例えば、この草の葉は若い葉であればテンプラにすると特有の匂いが消えて食べられるとか、観賞用にはいいが実は生らないので食用には役に立たない木とか、葉が痛いので勝手に入ってほしくない場所に植える木でであるとかである。他には例えばレバノンシーダー(レバノン杉)など。この木はかなりの大木になる木でレバノンの国旗になっているほど重要な木なのであるが、現地のレバノンでは開発や戦争などで、数十本しか残っていないなども伺った。
そういやって色々と説明を聞いて改めて思ったのだが、はやりさっぱり木の名前が分からないということだ。そして一週回って帰ってくると、行きに聞いた木の名前を既に忘れている自分に気付き、もはやそこまで老化が進んでいるのかと情けなく思ってもいるところでもある。そして今回はメモ帳を持っていなかった。ガイド中にメモを取っている人達は若い人年をとった人に限らずかなりの割合であった。私達はたまたま参加したとはいえ少し真剣さが足りなかったかもしれない。
そんな私は今帰ってきたところで、改めて木の名前を探し出しているところである。枝に羽のような縁が付いている錦木、白いユリの様花を付けていたタイサンボク、フランス庭園の並木のプラタナス、秋に色ずくイロハモミジと、それより少し大きい葉のヤマモミジ、新宿御苑に最初に移入されたというユリノキアジサイの中で葉が柏の葉に似ているからカシワバアジサイ、など。
写真は花の見頃であった、タイサンボクである。
どういう経緯があるにせよ、新宿駅から10分程度の所にこんな場所があるなんて驚きでした。

HP:新宿御苑