昆布のお猪口

昆布のお猪口


私は酒飲みであり、そして日本酒飲みである。会社の飲み会においても、乾杯から日本酒を一人頼んで飲む程だ。そしてこの度、日本酒飲みにとって貴重なお猪口を手に入れた。何と昆布で出来ているのである。私の知り合いの一人に買い物好きな者がいて、その知り合いがフリーマーケット歩いている時に、偶然見つけて買ってきたそうである。その知り合いは生憎酒を飲まないので、何のために買ってきたのか良く分からないのだが、私がありがたく頂戴する事になった。それが写真のお猪口である。
他に珍しいお猪口としては、イカの徳利とお猪口がある(こちらは、徳利もセット、もちろん生ではなく、乾燥させた物)。青森の八戸などでお土産として売られいる。その時は友人が購入し、私はお相伴にあずかった。イカのお猪口に酒を注ぐと、サキイカ色の徳利の透明度が増して、イカの容器がほんのりと酒に溶けているのが分かる。さっそく一口すすると、お猪口に触れた口元からもイカの塩味が薄く感じられ、酒にも魚介類の味がしみてなかなかうまい。ただし、そのようにして味わいながらちびちびとやっていると、30分ぐらいで、容器から酒が染み出して、容器を持つ手も濡れるようになる。しかし、そのイカと酒のうまみが染み出した手を嘗めながらすするもの、酒好きにとってはたまらない所である。
ではさっそく、昆布だしが染みることを期待して酒を注ぐ。写真の見た目で分かるが、イカのお猪口と違ってかなり容器がしっかりと作られていて、持ってみないと陶器製とは分からないほどの厚みと色艶である。ただし昆布であるので容器は軽い。また説明書にも、使い終わったら乾かして、また御使用くださいとある。何度も使用可能なようだ。しばらく酒を昆布に馴染ませて、ぐびり、と頂く。うむ、たしかに、ほんのりと昆布だしの味がする。そしてまた容器を嘗めると、たしかに昆布出汁の味だ。ちびちび、ちびちび。酒を飲んでいて思ったが、昆布酒というのは果たして、美味しいのだろうか。まあ、昆布出しで作った鍋料理には日本酒が合うので、日本酒と昆布の相性がいいことに間違は無い。だが、あいにくとイカほど解け具合がよくない、またあくまでも出汁は出汁であって、イカほどのツマミの地位を、昆布は獲得していない。昆布のツマミあるが、味付けされているだろう。というわけで、珍しい体験ではあったが、軍配はイカのお猪口にあがった。まあ、面白い趣向ではあるので、しばらくブヨブヨになるまで、この昆布お猪口で晩酌を楽しむとしよう。