2005-08-02 晴夜 詩 津村信夫 星のちかい山の小都会で、娘は病ひに臥せつてゐた。 天《そら》は、いくたびか雪を降らせた。 それから、幾夜さか、晴れた天《そら》がさしのぞかれたが、屋根の積雪はかたくて、もう月光をも透《とほ》さなかつた。 老母は時折、窓をあけて、屋根の上の雪をかきあつめてゐた。 羽搏《はばた》くものがきこえた、娘は雪のつまつた、枕をして、胸の上で、静かに、また、手を組みあはせた。 目次に戻る