――戸隠の炉端

主人《あるじ》は最後に お社《やしろ》のうしろで真紅《まつか》な鳥を見た さう云つて話すと一息いれた

――もう話はみんなです 山がお気に入りましたか
――もつと話して下さい 自然のことを
――さてなんだらう 自然と云つて 私達初め まるで立木のやうだで
――ああ さうです あなた方の あなた方のなかにある自然を……

主人《あるじ》は答へず榾火《ほたび》を掻《か》いた
母親の傍で 末の子は眠つてゐた 今のいま乾燥《はしや》いだ子が もう虫声を枕にして

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