お天気の日の海の沖では

お天気の日の海の沖では
子供が大勢遊んでゐるやうです
お天気の日の海をみてると
女が恋しくなつて来ます

女が恋しくなるともう浜辺に立つてはゐられません
女が恋しくなると人は日蔭に帰つて来ます
日陰に帰つて来ると案外又つまらないものです
それで人はまた浜辺に出て行きます

それなのに人は大部分日蔭に暮します
何かしようと毎日々々
人は希望や企画に燃えます

さうして働いた幾年かの後《のち》に、
人は死んでゆくんですけれど、
死ぬ時思い出すことは、多分はお天気の日の海のことです