2005-12-02 失せし希望 詩 中原中也 暗き空へと消え行きぬ わが若き日を燃えし希望は。 夏の夜の星の如くは今もなほ 遐《とほ》きみ空に見え隠る、今もなほ。 暗き空へと消えゆきぬ わが若き日の夢は希望は。 今はた此処《ここ》に打伏して 獣の如くは、暗き思ひす。 そが暗き思ひいつの日 晴れんとの知るよしなくて、 溺《おぼ》れたる夜《よる》の海より 空の月、望むが如し。 その浪はあまりに深く その月はあまりに清く、 あはれわが若き日を燃えし希望の 今ははや暗き空へと消え行きぬ。