波止場の烟

野鼠は畠にかくれ
矢車草は散り散りになつてしまつた
歌も 酒も 恋も 月も もはやこの季節のものでない
わたしは老いさらばつた鴉のやうに
よぼよぼとして遠国の旅に出かけて行かう
さうして乞食どものうろうろする
どこかの遠い港の波止場で
海草の焚けてる空のけむりでも眺めてゐよう
ああ まぼろしの乙女もなく
しをれた花束のやうな運命になつてしまつた
砂地にまみれ
礫利食《じやりくひ》がにのやうにひくい音《ね》で泣いて居よう。

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