農夫

海牛のやうな農夫よ
田舎の家根には草が生え、夕餉《ゆふげ》の烟ほの白く空にただよふ。
耕作を忘れたか肥つた農夫よ
田舎に飢饉は迫り 冬の農家の荒壁は凍つてしまつた。
さうして洋燈《らんぷ》のうす暗い厨子のかげで
先祖の死霊がさむしげにふるへてゐる。

このあはれな野獣のやうに
ふしぎな宿命の恐怖に憑《つ》かれたものども
その胃袋は野菜でみたされ くもつた神経に暈《かさ》がかかる。
冬の寒ざらしの貧しい田舎で
愚鈍な 海牛のやうな農夫よ。

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