2005-06-01から1日間の記事一覧

おもちゃ

おもちゃよ おもちゃよ たんとあれ 目次に戻る 傍点は太字でしめした。 ルビは《》で示した。 底本:「定本 八木重吉」彌生書房(平成5年)

まり

なにがいいかって やっぱり 鞠はいとのまりがいい おおきくてかるいのがいい ぽこぽこしていて ぶっつからぬさきにはずむようなのがいい 目次に戻る

いいゆうやけだ じいっと みていると かすかに くもはうごいている そらがうごいているようだ 空いちめん うすくれないとみどりだ 目次に戻る

ゆうぐれ まっ青なはらっぱで 狂人《きちがい》がすわりこんで たばこをふかしていた 空気までまっさおなはらっぱだった 目次に戻る

ひるひなか ひろい庭のまんなかに からからになって しかもまるくつるつるした いっぴきの蛙がひっくりかえってた 目次に戻る

たかい たかいところからみていたい おこるどころか じぶんは とろっとろと 熔けてしずかにふるえながら なにもかも美しみたいものだ 目次に戻る

おおきな河のうえを 夜の汽車でとおる むこうのほうにも 橋があるらしく いちれつの灯がかわにうつって ひとつびとつ ながい ながいひかりになっている 目次に戻る

森へはいりこむと いまさらながら ものというものが みいんな そらをさし そらをさしているのにおどろいた 目次に戻る

いても たってもいられない はなしてもだめ ひとりぼっちでもだめ なにかに あぐんと食われてしまいそうだ 目次に戻る

柿の花が 柿の木のまわりに落ちていた ぱらぱらとちらばっていた その日は 桃子にきつくほほずりしてねむりについた 目次に戻る

きりすとを おもいたい いっぽんの木のようにおもいたい ながれのようにおもいたい 目次に戻る

だあれも 人のみてないとこで おもいきり人のためになることをしていれぬものか 目次に戻る

まりに あきたら 独楽と ゆこう こまにあきたら まりと ゆこう 目次に戻る

まりは ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ わたしも ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ 目次に戻る

いいもの みつけた あった あった まりがあった 目次に戻る

こまというものは 鞠の うえしたが とんがったんだ まりの しんるいだ すこし かんじはするどい やっぱり こまのほうが 神さまにはちかいかな 目次に戻る

ひとりでんに できたものといえば おそらく まりだろう 目次に戻る

おもちゃに むちゅうになってたら なにも かも おもちゃに みえてきたぞ おかしいことには なにも かも ちいさくみえて おもちゃばっかり 巨《おお》きい 目次に戻る

川をかんがえると きっと きもちがよくなる みるより かんがえたほうがいい いまに かんがえるように みることができてこよう そうなれば ありがたい 目次に戻る

色は なぜあるんだろうか むかし 神さまは にこにこしながら色をおぬりなされた 児どもが おもちゃの色をみるようなきもちで 目次に戻る

ひいとおよ ふうた ふうたあよ み いい ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ ぽこ まりをついてると いったい 数《かず》というものが どうして できたか なぜ 数というものは あったほうがいいんだか そんなわけがらが ほんのりと わかってくる 目次に戻る

まりと あかんぼと どっちも くりくりしてる つかまえ どこも ないようだ はじめも おわりも ないようだ どっちも ぷくぷく だ 目次に戻る

ぽく ぽく ぽく ぽく まりつきをやるきもちで あのひとたちにものをいいたい 目次に戻る

まりを ぽくぽくつくきもちで ごはんを たべたい 目次に戻る

かんしんしようったって なかなか ゆう焼のうつくしさはわかりきらない わかったっていいきれない ぽくぽく ぽくぽく まりをついてるとよくわかる 目次に戻る

ぽくぽく ぽくぽく まりを ついてると にがい にがい いままでのことが ぽくぽく ぽくぽく むすびめが ほぐされて 花がさいたようにみえてくる 目次に戻る

ぽくぽくひとりでついていた わたしのまりを ひょいと あなたになげたくなるように ひょいと あなたがかえしてくれるように そんなふうになんでもいったらなあ 目次に戻る

あかんぼが あん あん あん あん ないているのと まりが ぽく ぽく ぽく ぽくつかれているのと 火がもえてるのと 川がながれてるのと 木がはえてるのと あんまりちがわないとおもうよ 目次に戻る

こどもがよくて おとながわるいことは まりをつけばよくわかる 目次に戻る

てくてくと こどものほうへもどってゆこう 目次に戻る