こころ

こころをばなににたとへん
こころはあぢさゐの花
ももいろに咲く日はあれど
うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて。

こころはまた夕闇(ゆふやみ)の園生(そのふ)のふきあげ
音(おと)なき音(おと)のあゆむひびきに
こころはひとつによりて悲しめども
かなしめどもあるかひなしや
ああこのこころをばなににたとへん。

こころは二人(ふたり)の旅びと
されど道づれのたえて物言ふことなければ
わがこころはいつもかくさびしきなり。