ハゲ田

私の仕事は終わりました
水は抜かれて
稲は刈り取られ
いがぐり頭になりました

夏には青々と草も茂り
バッタや蝶々が飛び
蝉の鳴き声なんかも染み付き
風が吹くたびに歌い返したものです

とても大きなぐるぐる風や
雀《すずめ》なんかにも突《つつ》かれましたが
つい最近までは皆《みんな》が頭をなで
重たくなった頭を褒《ほ》めてくれました

こうして終わってみると寂《さび》しいものです
私は藁《わら》の服と帽子を被り、束を背負い
天の下《もと》で、ふられたり ほされたりして
会いに来てくれるのはカラスだけになりました

どうしたものかと考えておりましたが
蟋蟀《こおろぎ》の愛の音《ね》が聞こえてくるようになると
そんなものも増えてきましたので
皆《みんな》で夕焼け空を眺めることにしています

    (2004.9.23)
 刈られた水田で、藁を重ねた人型を見て