石彫
風の過ぎ去った丘に
わずかに残された雲に
陽《ひ》へと帰る枯葉《かれは》に
山に宿る者達の念仏《ねんぶつ》が始まる
繰返す者達
生成と消滅の間には
時と時が結ばれ
その時々の黄昏《たそがれ》が含まれる
止まった時の形から
世界の渦へと授《あずけ》けられ
変わらぬ者は何を思うのか
あらゆる形を持つ者の
個体の消滅を捉《とら》えながら
無限ともいえる時を
見つめて生きるのか
滅びるから生きるんだ
変わるから感じるのか
石とは、悲しみや喜びを
閉じ込めて強く思ったから
形を維持し続けるのか
夜に私は眠っている
石になっている
月の光を浴びて
石は森を作るのだろう
私たちが壊した者を
さすれば私は 夜の物になろう
(2004.09.19)
岩手県岩手町石神の丘美術館 屋外展示にて