放課後の時

教室の空気は重い
口聞《き》く者おらず
皆《みな》かりかりとペンを走らせ
皆カタカタと指をたたく

その部屋は不釣合いで
木枠の大きな窓
時代へのタイムスリップ
一人空を見る放課後の教室

黒板の上には標語
行事・コンダテ・清掃当番
僕にはもういっぱいいっぱい
机までもがカチコチ並ぶ

早く自由になりたい
学校に行くのは食べれないから
自分で生きられないから
檻の中のサル 広い世界へ

高校へ入《い》り大学に行く
いくらか自由になってきた
頭を空に向け始めたら
鳥や虹が見えてきた

でも走れなかった
それはわかってたんだ
床のきしんだ寮にいて
お腹は減っていた、空《くう》だった

二段ベットの下空を見ている
西から東へ暮れてゆくそら
パステルカラー色鉛筆
流れゆく放課後

会社にはお腹が付いてきた
放課後は減りすぎた
ずっとないものねだりは出来ない
人はそうやって生きてゆくものだ

足をとられて体を反れば
見つめ合うのはケヤキの並木
土に根を張り養分をとり
腕を掲げて空をつかむ

春《とき》には目覚め
夏《とき》には青く
秋《とき》には愁《うれ》い
冬《とき》には耐《た》えて

会社を辞めて渡り鳥になった友もいる
空を求めて蛹に耐える友もいる
私は木として空へ手を掲げる
放課後ではなく選択の空へ

  (2004.9.26)
中学校での試験監督にて