足湯

ねずみ色か灰色か
銀色から雪色へ
水色と浅葱色
みかん色は紅と
空を揺らすまだらな雲は
早くも冬の季節を受けて
赤みをおびた西の空へと
色づきつつも漂っている

見上げた目線の先の空
スタート地点と決めまして
薄くなりつる雲の隙間を
迷路に見立てて歩いてみよう
時には浅葱の場所にも着いて
秋澄む空が見えたりもして
さあ、どちらへと進もうか
進む道はどちらにもある
流れるお湯はジャブジャブと
木枠に腰掛け考えてみた

進む道がわからぬ時とは
どちらの方へも進める時だ
私はいつもそんな人生を送っている
どちらに進んでもいいと
ただ、どちらに進むかわからないと
わかっている時は道が見えているが
それは進む道がそれしか無いのかも知れない
一方通行の迷路を進んでいるだけなのかも
この足湯の時はなんとのどかな時だ
きっと私の人生は、このように社会に足をつけながら
たぷたぷと、足を左へ右へ自由に動かしいてるのだ

あくせく真っ直ぐ道を進む人より
薄い雲の一本の道を行くより
あの浅葱色の空間で
どちらにもゆける人生を歩んでいる
足を痛めた農家の嫁が
痛風いたわるノンベの爺が
面接通う女子大生が
出張疲れのサラリーマンが
足湯につかって空を見て
お湯にからませてゆらゆらとさせ
そんな日本中のみんなが
あの浅葱色の空に集まっているのだろう

    (2004.11.25)
山形県東根温泉の足湯に一時間程浸かりながら、周りに遮るものの無い、ほどよく山に囲まれた秋の空を見つめて