2005-03-22 北の海 詩 中原中也 海にゐるのは、 あれは人魚ではないのです。 海にゐるのは、 あれは、浪ばかり。 曇つた北海の空の下、 浪はところどころ歯をむいて、 空を呪《のろ》つてゐるのです。 いつはてるとも知れない呪。 海にゐるのは、 あれは人魚ではないのです。 海にゐるのは、 あれは、浪ばかり。 目次に戻る