2005-03-22 残暑 詩 中原中也 畳の上に、寝ころばう、 蝿《はへ》はブンブン 唸つてる 畳ももはや 黄色くなつたと 今朝がた 誰かが云つてゐたつけ それやこれやと とりとめもなく 僕の頭に 記憶は浮かび 浮かぶがまゝに 浮かべてゐるうち いつしか 僕は眠つてゐたのだ 覚めたのは 夕方ちかく まだかなかなは 啼《な》いてたけれど 樹々の梢は 陽を受けてたけど、 僕は庭木に 打水やつた 打水が、樹々の下枝《しづえ》の葉の尖《さき》に 光つてゐるのをいつまでも、僕は見てゐた 目次に戻る