2005-05-25 マグダラのマリア 詩 八木重吉 マリアはひざまずいて 私ほど悪るい女はないとおもった キリストと呼ばれる人のまえへきたとき 死体のように身体をなげだした すると不思議にも まったく新らしいよろこびがマリアをおののかせた マリアはたちまち長い髪をほどき 尊い香料の瓶の口をくだいて髪をひたし キリストの足を心をこめてぬぐうた 香料にはマリアの涙があたたかく混じった マリアは自分の罪がみな輝いてくるのをうっとりと感じていた 目次に戻る