マグダラのマリア

マリアはひざまずいて
私ほど悪るい女はないとおもった
キリストと呼ばれる人のまえへきたとき
死体のように身体をなげだした
すると不思議にも
まったく新らしいよろこびがマリアをおののかせた
マリアはたちまち長い髪をほどき
尊い香料の瓶の口をくだいて髪をひたし
キリストの足を心をこめてぬぐうた
香料にはマリアの涙があたたかく混じった
マリアは自分の罪がみな輝いてくるのをうっとりと感じていた

目次に戻る