宮中雅楽の夕べ

gravity22005-06-20


せっかく都会に来たのだから、色々な演奏会などにも顔を出してみようかと、近くの文化施設で行われた「宮中雅楽の夕べ」という演奏会を聞きに行ってきました。なぜこのような事に興味を持ったかと言いますと、そこで使われている楽器の音を聞きたかったからであり、西洋の楽器の音は音楽の授業やクラシックのコンサートなどで聞いた事がありますが、日本の古来の楽器の音は聞いたことがなかったからです。
そもそも雅楽とは何かということですけれども、雅楽とは俗楽に対する言葉であり、正統の音楽を意味します。
雅楽には、起源によって、「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」「大陸系の楽舞(がくぶ)」「歌物(うたいもの)」の3種類があります。国風歌舞は日本固有の古楽に基づくもので、神楽(かぐら)・東遊(あずまあそび)・大和歌(やまとうた)・久米(くめ)舞などで、大陸系の楽舞は5世紀から9世紀当初までに朝鮮、中国などから伝来したアジア大陸の音楽舞踊に基づいたもので、中国系の唐楽(とうがく)と朝鮮系の高麗楽(こまがく)で、歌物は大陸系の音楽の影響を受けて平安時代に作られ、唐楽器等の伴奏で歌われるようになったもので、民謡を歌詞とする催馬楽(さいばら)と、漢詩を歌詞とする朗詠(ろうえい)があります。そしてまた演奏形式も、器楽を演奏する管絃と舞踊を主とする舞楽と声楽を主とする歌謡とに分かれています。
使用される楽器には、日本古来の神楽笛・和琴などのほかに、外来の笙(しょう)・篳篥(ひちりき)・笛などの管楽器と、箏(そう)・琵琶(びわ)などの絃楽器と、鞨鼓(かっこ)・太鼓(たいこ)・鉦鼓(しょうこ)・三の鼓(つづみ)などの打楽器があります。
演奏会が始まると、演奏の初めにそれぞれの楽器の音が紹介されました。どんな音だったかというのを少し説明しましょう。演奏において主旋律を奏でるのは篳篥(ひちりき)という短い縦笛であり、この楽器は震えるような音で、遠くまで聞こえるかなり大きな音が出ます。ゴムのチューブをつぶして吹いて音をならした様な感じの震え具合です。そしてこの主旋律を装飾する旋律となるのが龍笛であり、こちらは音域が広くさまざまな音を出す横笛です(他に神楽笛高麗笛があります)。そして笙は、透き通ったような高い音をだす楽器で、パイプオルガンのように竹で出来た管を重ねた形をして、ハーモニカの原理の曲だそうです。これらは吹き物と呼ばれます。
次は弾き物。これには琴と琵琶があります。琴の方はテレビ通販でも販売しており馴染みがあると思いますので、琵琶の方にいきます。これは楽器の形はそのままですが、枇杷の実のような落ちていく水滴の様な形をしており、ギターの様に弾く弦楽器であります。平家物語を語ったりする琵琶法師は、この楽器で弾き語りを行う盲人音楽家の事ですね。音色を聞きましたが、音の高低があるというよりも、寂しげに音を切ることによって、場のを展開させていくというような楽器であるように思えました。最後に打ち物ですが、鞨鼓(かっこ)・太鼓とあり、鞨鼓は鼓であって、ポン ポンと中身のないおなかを叩くような音がしました。太鼓はそのままです。
こうは言ってみましたが、どうも音楽方面には縁がないので表現して言葉にするのは難しいですね。
さて、これらの楽器を用いて曲が奏でられるわけですが、その曲もまた何とも言い難い感じです。雅楽というは実際には宮中の儀式等で用いられる物であり、何か明確な主題の元で物語が展開しているというよりは、同じような動作を繰り返すことによって奏上奉るという感じでありまして、ハイライトシーンがないような感じでありました。感じたことを説明せよと言われるとするならば、「世界はそのようにあった」という流れを社会より少し上の目線で眺めているという感じの曲であったといえます。そもそも雅楽は宮中の宴ということで儀式的な形式でもありますし、そして解説が足りないのか、或いはわからないのか、主題といいますか何を表しているのかということが分かりにくい曲でありました。
この日の午前中は、友人と美術館に出かけていたのですが、夕方から演奏会を聞きに行くという事で、雅楽を聴きに行くと言ったら、「この貴族めが」と言われてしまいましたが、やはり大昔から農民・土民であった我が一族には、宮中の音楽は難しいのかもしれません。
舞なども、現在の音楽の様に、最初から歌う人、踊る人が舞台にいて曲が始まるのではなく、曲がはじまってから舞う人が舞台に配列し、舞い、そして音楽に合わせて去っていくという、奏上する形でありました。
ただ、全体的にいえることは、吹き物の音的な響きが、西洋のリコーダーとは違って竹で出来ているだけあって、鳥の鳴き声に近いような音があったり、狭い洞窟を風が流れていくような音があったりと、私たちの声の領域、あるいは定常状態の自然界にあるような音に近かったような思います。大河ドラマのシーンではありませんが、竹藪の中とかで笛を吹いたとしたら、自分の音の空間がそこにできるのではなく、森と振動するように一体化するような響きになるのかなあと思われるようなような楽器であり、私も龍笛でも始めてみようかなあと少し思ったりもしました。
日記の最初に音を探していると言いましたが、どういう音を探しているかといいますと、会社をやめて世を捨てて森・山に入った時に、そこで自分が弾く楽器としてどういう物が良いのかと探しております。今の所オカリナを持っていますが、海の見える丘とか岬とか、見晴らしの良い山の頂上とか、広々とした所で吹くのは良いような気がしますが、周りに木が茂っている場所で弾くのは合わないのではないかと思っており、そういう所で弾く・吹く楽器としては何が良いのかと思っているところなのです。
余談ですが、この演奏は宮内庁式部職楽部の演奏であり、演奏家たちは国家公務員であります。宮内庁というのは何をしているのか良く分からない気がしていましたが、不思議なところだなあと改めて思いました。職員も昔は華族だったりするんですかね。