午後の時

gravity22005-08-10

弓なりに反り返る
ケヤキの枝の下
ベンチの縁に 頭と足を投げ出し
寝そべって上を見ていた

太陽は正午の位置にある
日はまぶしい
求める物は何か
私はあえてそれを見つめる
手を伸ばしても
遮ることは出来ない
透くことは出来ない
太陽はどういう形をしているか
それは母の形であろうか
それとも父の形であろうか
私にはそれが とても眩しいのであり
直接見ることが出来ない
長らく会っていない
こんなに大きな生きると言うことに

私にある太陽は
緑の大らかな形をしている
先の細くなった 雲の様に広がる枝と
森の時よりも小ぶりな 葉を茂らせている
私はかつて その大振りな葉を知っていた
山の麓の 森の中に
杜の都の街路樹に
互いに重なり合い 風に揺れ
濃くなり 星々と輝き
土に光を与え続ける
下草もさわいでいた
今 私は日比谷の街で
その樹々達を深く見つめ
眩しくもあり
くすぐったくもある
それが今の自分の形
街の中の 小さな森人達
道の音は夏に消され
蝉の声が聞こえ始めている
土を這い出た幼虫の 初声は短い
姿こそ見えないが
蝉にも好きな木があるのだろうか

    (2005.7-8)
 アスファルトから蒸す熱気に、なぜここに居るのだろう再び悲しみを深くしていた私は、一週間ぶりに歩くことが出来た日比谷公園で、まだ初々しい蝉の声を聞いた。