空地

私は食事時間に
大きな建物の間にある中庭を横切つた

日ざかりの中庭には
いつでも つながれてゐる一疋《いつぴき》の牛を見た
倦《う》みつかれてゐる私の目にも
牛は懶惰《らんだ》に臥《ふ》してゐた
樹木とては もとよりなかつた
建物の作る僅《わづ》かばかりの影地で
時たま 手足を露出した
洋服着の少女が読書をしてゐた

日光《ひかり》をよけて
私は この空地をも
いそぎ足にすぎねばならなかつた

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