牛のこと

大きな建物のなかで
靴で踏まれたり
鼻拭《ふき》にされた紙きれは
いつのまにか
うづたかく積まれて
その事を曳《ひ》いてかへるのが
その従順な動物の役目だと
私はあとになつて聞かされた
丁度 中庭と同じだけの
大きさの青空が
そこから うかがはれたが
その空に
いくつかの星屑がはめこまれて
夕暮 牛は静かに帰へつて行つた
あるときは
私たちよりもおくれて
獣が臥《ふ》してゐた敷石が
いつのまにか
冷えて行くままに

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