日本の田舎

夢に見る
吾子《あこ》の姿は
銃になひ 馬上も豊か
うちすぎぬ 微笑うかべ
一の爺《をぢ》 そを語りぬ

二の媼《おうな》語りつぎつつ
畑うちぬ 土くろき畑
面《おも》つつむ手拭をとりて
うれしげに
涙ぬぐへば

日の本のみいくさ歌ふ
童《わらべ》の群
野道をいそぐ
空のかた 白雲の湧く方へを
童子《わらべご》は指さし歌ふ

歌声はかしこにもあり
山霞み
眺めは はるか
歌声は彼方にもおこる
こだまして いと冴々と

これの日も
ふるさとは春たけて
筵《むしろ》干す農家の庭べ
稚子《ちご》ねむり
陽炎のしきりに燃ゆるなり

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