太郎へ

ビルの間《あいだ》に
幾万もの人達
街を歩く日
ひと足 ひと振り
人という密度が
アスファルトに背を反らし
大きく手を振りかぶって
ラジオ体操を踊る
太陽を手に入れた者達
大声を張り上げ
笑顔で 高らかに
今日という日を
一度に畝《うね》らす
それは始まり
原始の生まれるところ
ぷくっと浮き上がる酸素に
新しい笑顔が加わる
いつの日か人は
自らのモニュメントとなり
幾つもの顔を
誇らしげに人に譲る
人と太陽の始まり
諸手は大地をつかみ
原人は土を捏《こ》ねる

それは荒々しく
それはまがまがしく
それは厳つき
それは海のように荒れ
それは食らいつき
それはうちひしがれ
それは渦のように沸き
それは朝日を溶け入れ
それは愛くるしく
それは壺のように尖《とが》り
それは母のようでもあり
それは父のようでもあり

そこに原始(天地)に生まれてきた 新しい生命の顔を見いだすだろう

    (2005.7)