夜の木々

岩畳


埼玉県の長瀞へ、キャンプに出かけてきました。長瀞の川沿いは岩畳という地層が有名で、薄い地層が年輪の様に層として固まった岩が、川の流れによって削られて剥き出しになった所です。
キャンプ場は林の中にありました。私は最近木の名前を覚えようと思い、「葉で見分ける樹木」という本を買って色々調べています。その本は葉の特徴に着目して木々を分けており、大変分かり易い本です。私は最近街を歩いていても、人より木の方が気になるようになり、突然立ち止まったり、木の樹皮を撫でたりして、他の人から見たら少し不思議な人に見えてしまうかもしれません。
キャンプ場の木々を観察したところ、ビワ・オオモミジ・イロハモミジ・コナラ・クロマツ・カヤ・しだれ桜などを見分けることが出来ました。しかし一方で、見た事があるけれど判別できない、そういう木々も残りました。私は分からない木の特徴を、互生・鋸歯・不分裂の葉、葉脈がハッキリしている、樹皮はきめが粗い縦割、としてノートに書き付けてきました。しかし、家に帰ってきてから調べても「これ」という木を該当をすることは出来ません。やはり、樹木の種類を判別するという事はそうとう難しいものです。
キャンプの当日は天候も悪く、夜は雨になりました。家の中にいると大した事のない雨も、夜空の下に張ったテントの中だと違います。夜のテントは雨を吸って内側に反り、部屋を狭めてきます。雨粒の一つ一はテントの上で跳ね返り、そして時には木の葉に集まった大粒の雨が落ち、まるでドングリが落ちたような音をさせることもありました。
私はなんだか寝つけそうにないのでテントの外に出て、夜の雨に濡れる木々を眺めました。山の中のキャンプ場であれば真っ暗なのでしょうが、都会近くのオートキャンプ所なので常夜灯があり、月明かりよりは明るいが街中よりは暗いというぐらいでした。
その中で木々を眺めていると、幾つかの木が実をたくさん垂らしているのが見えました。昼間歩いた時にそんな実あったかなあと不思議に思って近寄ってみると、それは葉の裏面であって、表と裏で葉の色の濃さが違うために葉の裏の方が実の様に見えただけでした。昼間は光が強いので、表と裏の色彩の違いに気が向かなかったのかもしれません。或いは、表と裏の違い以外にも様々な色の違い見えるために、このことに気が付かなかったのかもしれません。暗い中では表と裏という2つの色がくっきり浮かび上がるようです。
かといって、全ての木がそうなっているというわけではありません。イロハモミジなどは昼間と同じで、コナラなどがこのまだら模様になっているのです。どうしてだかわかりますか? この謎はよほど樹木に親しい人でないと、この違いを含めた上で木の映像を思い浮かべることが出来ないと思いますが、二つの木は葉の付き方が違うのです。闇の中で2つの木を見比べると特に良く分かりますが、イロハモミジなどは一つの枝の中で葉を同じ方向に向けており、一方でコナラなどは一つの枝の中で葉を異なる方向に向けているのです。この葉の広げ方はおそらく枝の付き方・伸び方と関係しており、どちらもよりたくさんの光を受けるようになっているのだと思います。
普段と行動を変えてみると、今まで気づかなかった世界が見えてきて面白いものです。いつもと同じ場所でも、新しい大切な事が見えてくるかもしれません。
(写真は友人T提供)