蟹の歌

波うち寄する磯際《いそぎは》の
一つの穴に蟹二つ
鳥は鳥とし並び飛び
蟹は蟹とし棲《す》めるかな

日毎《ひごと》の宿《やど》のいとなみは
乾く間《ま》もなき砂の上
潮《しほ》引く毎に顕《あらは》れて
潮《しほ》満《み》つ毎《ごと》に隠れけり

やがて天雲《あまくも》驚きて
落ちて風雨《あらし》となりぬれば
流るゝ砂と諸共に
二つの蟹の行衛知らずも

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