銀鎖

こゝろをつなぐ銀《しろがね》の
鎖《くさり》も今はたえにけり
こひもまこともあすよりは
つめたき砂にそゝがまし

顔もうるほひ手もふるひ
逢ふてわかれををしむより
人目の関はへだつとも
あかぬむかしぞしたはしき

形《かたち》となりて添はずとも
せめては影と添はましを
たがひにおもふこゝろすら
裂きて捨つべきこの世かな

おもかげの草かゝるとも
古《ふ》りてやぶるゝ壁のごと
君し住まねば吾胸は
つひにくだけて荒れぬべし

一歩に涙五歩に血や
すがたかたちも空の虹
おなじ照る日にたがらへて
永き別れ路《ぢ》見るよしもなし

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