2005-11-07 罪 詩 島崎藤村 罪《つみ》なれば物のあはれを こゝろなき身にも知るなり 罪なれば酒をふくみて 夢に酔ひ夢に泣くなり 罪なれば親をも捨てて 世の鞭《むち》を忍び負ふなり 罪なれば宿を逐《お》はれて 花園に別れ行くなり 罪なれば刃《やいば》に伏《ふ》して 紅《あか》き血に流れ去《さ》るなり 罪なれば手に手をとりて 死の門《かど》にかけり入るなり 罪なれば滅び砕けて 常闇《とこやみ》の地獄のなやみ 嗚呼二人《ふたり》抱《いだ》きこがれつ 恋の火にもゆるたましひ 目次に戻る