椰子の実

名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の実一つ

故郷《ふるさと》の岸を離れて
汝《なれ》はそも波に幾月《いくつき》

旧《もと》の樹は生《お》ひや茂れる
枝はなほ影をやなせる

われもまた渚を枕
孤身《ひとりみ》の浮寝《うきね》の旅ぞ

実をとりて胸にあつれば
新《あらた》なり流離の憂《うれひ》

海の日の沈むを見れば
激《たぎ》り落つ異郷《いきやう》の涙

思ひやる八重《やへ》の汐々《しほじほ》
いづれの日にか国へ帰らん

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