家族

わたしの家は庭一ぱいの雑草だ
わたしは雑草を愛してゐる
まるで草つぱらにあるやうなわたしの家にも冬が来た
鋼鉄《はがね》のやうな日射の中で
いのちの短いこほろぎがせはしさうにないてゐた
わたしらはそのこほろぎと一しよに生きてゐるのだ

日一日と大気は水のやうに澄んでくる
いまはよるもよなかだが
こほろぎはしきりにないてゐる
わたしは寝床《ねどこ》の上ではつきりと目ざめた
子どもを見ると
子どもはしつかりその母に獅噛《しが》みついてゐるではないか
そしてぐつすりねこんでゐる
おお、妻よ
お前もそこでねむれないのか
しんしんと沁み徹るこの冷気はどうだ
もつとおより
一ツ塊《かたま》りになるまで

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