山村暮鳥

詩のpickup(好きな詩)

山村暮鳥さんの詩の中から、好きな詩を10詩選びました。 詩集「三人の処女」から 沼(やまのうへにふるきぬまあり、ぬまはいのれるひとのすがた) 詩集「聖三稜玻璃」から 岬(岬の光り 岬のしたにむらがる魚ら) 詩集「梢の巣にて」から 自分は光をにぎつ…

山村暮鳥の年譜

明治17年 群馬県西群馬郡穂高村(現群馬町)に、農業を営む木暮久七、志村シヤウの長男として生まれる。父は志村家に婿入りしていたが、入籍されていなかったため、暮鳥は祖父の次男志村八九十として届けられた。 明治22年 父は祖父の確執のため家を出て…

詩のpickup(生い立ち・人生について)

山村暮鳥さんの詩の中から、生い立ち・人生について語った詩を数点選びました。 ふるさと(なんといふ記憶だらう これがあの大きな山のふところで) 自序 (大正7年 詩集「風は草木にささやいた」序文)(或る日、自分は癇癪的発作のために打倒された。而も…

詩のpickup(人間の強さについて)

山村暮鳥さんの詩人としての道は、美、宗教、そして自然へと連なっていきましたが、その全ての詩は人間の強さを信じ、万物に対して赤裸々に人間の力を表現したものとして紡がれています。 ここでは山村暮鳥さんの詩の中から、人間の強さについて語った詩を数…

詩のpickup(家族・友人について)

山村暮鳥さんの詩の中から、家族・友人に関する詩を数点選びました。 家族について 朝朝のスープ(或る朝、珍しいスープがでた それをはこぶ妻の手もとは震へてゐた) 家族(子どもを見ると 子どもはしつかりその母に獅噛みついてゐる) 父上のおん手の詩(…

おなじく

いいお天気ですなあ とまた しばらくでしたなあ おや、どこだらう たしかにいまのは 【まるめろ】の声だつたが…… 目次に戻る 傍点は太字で示した。 ルビは《》で示した。 旧漢字の一部を新字体になおした。 対応できない字は【】で示した。 ルビは底本のもの…

おなじく

銭で売買されるには あんまりにうつくしすぎる 店のおかみさん こんなまつ赤な林檎だ 見も知らない人なんかに 売つてやりたくなくはありませんか 目次に戻る

店頭にて

おう、おう、おう ならんだ ならんだ 日に焼けた 聖フランシス様のお顔が ずらりとならんだ 綺麗に列んだ 目次に戻る

おなじく

林檎といつしよに ねんねしたからだよ それで わたしの頬つぺも すこし赤くなつたの きつと、そうだよ 目次に戻る

おなじく

さびしい林檎と 遊んでおやり おう、おう、よい子 目次に戻る

おなじく

りんごあげよう 転がせ 子どもよ おまへころころ 林檎もころころ 目次に戻る

おなじく

こどもはいふ 赤い林檎のゆめをみたと いいゆめをみたもんだな ほんとにいい いつまでも わすれないがいいよ 大人《おとな》になつてしまへば もう二どと そんないい夢は見られないんだ 目次に戻る

おなじく

ふみつぶされたら ふみつぶされたところで 光つてゐる林檎さ 目次に戻る

おなじく

林檎はびくともしやしない そのままくさつてしまへばとて 目次に戻る

おなじく

どうしたらこれが憎めるか このまつ赤な林檎が…… 目次に戻る

おなじく

こどもよ こどもよ 赤い林檎をたべたら お美味《いし》かつたと いつてやりな 目次に戻る

おなじく

くちつけ くちつけ 林檎をおそれろ 林檎にほれろ 目次に戻る

おなじく

娘達よ さあ、にらめつこをしてごらん このまつ赤な林檎と 目次に戻る

おなじく

林檎はどこにおかれても うれしさうにまつ赤で ころころと ころがされても 怒りもせず うれしさに いよいよ まつ赤に光りだす それがざびしい 目次に戻る

おなじく

おや、おや ほんとにころげでた 地震だ 地震だ 赤い林檎が逃げだした りんごだつて 地震はきらひなんだよう、きつと 目次に戻る

おなじく

ほら、ころがつた 赤い林檎がころがつた な! 嘘嘘嘘 その嘘がいいぢやないか 目次に戻る

赤い林檎

林檎をしみじみみてゐると だんだん自分も林檎になる 目次に戻る

りんご

両手をどんなに 大きく大きく ひろげても かかへきれないこの気持ち 林檎が一つ 日あたりにころがつてゐる 目次に戻る

ある時

沼の真菰《まこも》の 冬枯れである むぐつちよに ものをたづねよう ほい どこいつたな 目次に戻る

いつとしもなく

いつとしもなく めつきりと うれしいこともなくなり かなしいこともなくなつた それにしても野菊よ 真実に生きようとすることは かうも寂しいものだらう 目次に戻る

ふるさと

淙々《そうそう》として 天《あま》の川がながれてゐる すつかり秋だ とほく とほく 豆粒のやうなふるさとだのう 目次に戻る

ある時

まよなか 尿に立つておもつたこと まあ、いつみても 星の綺麗な 子どもらに 一掴みほしいの 目次に戻る

ある時

その声でしみじみ 螽斯《こほろぎ》、螽斯 わたしは読んでもらひたいんだ おまえ達もねむれないのか わたしは わたしは あの好きな比尼母経《びにもきやう》がよ 目次に戻る

ある時

まづしさを よろこべ よろこべ 冬のひなたの寒菊よ ひとりぼつちの暮鳥よ、蠅《はえ》よ 目次に戻る

ある時

こどもたちを 叱りつけてでもゐるのだらう 竹藪の上が あさつぱらから 明るくなつたり 暗くなつたり ほんとに冬の雀《すずめ》らである 目次に戻る