2006-01-30 麦畑 詩 山村暮鳥 此のみどり ああ此のみどり 生命《いのち》の色! 憂鬱なむぎばたけのうつくしさ むぎばたけをみてゐると 自分にせまる人間の情慾 此の力のかたまり 人間の強い真実 これこそ深いところから 浪浪のうねりをもつて湧き上つてくる力だ そして生生《なまなま》しい土の愛により どんなに大きな健康を麦ぐさはかんじてゐることか ああ此の麦ぐさの列 ああ、けふばかりは蒼天《そら》も自分にふさはしく どこかで雲雀《ひばり》もないてゐる ああ此のみどり 此の麦のみどりに手を浸して 自分はなみだぐんでゐる 目次に戻る