麦畑

此のみどり
ああ此のみどり
生命《いのち》の色!
憂鬱なむぎばたけのうつくしさ
むぎばたけをみてゐると
自分にせまる人間の情慾
此の力のかたまり
人間の強い真実
これこそ深いところから
浪浪のうねりをもつて湧き上つてくる力だ
そして生生《なまなま》しい土の愛により
どんなに大きな健康を麦ぐさはかんじてゐることか
ああ此の麦ぐさの列
ああ、けふばかりは蒼天《そら》も自分にふさはしく
どこかで雲雀《ひばり》もないてゐる
ああ此のみどり
此の麦のみどりに手を浸して
自分はなみだぐんでゐる

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