2006-01-30 病める者へ贈物としての詩 詩 山村暮鳥 林檎より美しいもの かすてらより柔いもの 此の愛をそなたにおくるのだ 此の愛を 雪のやうな此の愛 落葉《おちば》のやうにはらはらと そなたの上に翻へる そなたはそれをどうみるか 風の中なる私の愛を…… 何といふ冷い手だ 何といふさみしい目だ おお病める者 そなたのためには純白な雪 そして火のやうな私だ この愛の中で穀物の種子《たね》のやうな強き生《いのち》をとりかへせ 光りを感じ しづかに生き 目次に戻る