鉄瓶は蚯蚓のやうにうたつてゐる

うすぐらいでんとうがひとつ
せまいけれどがらんとしたへやだ
ぼんやりとめざめてゐるわたしに
なんといふしづかさ

そとではかぜがあばれてゐる
いたづらなこどものやうに
あめをつよくふきかけたり
とをがたがたとたゝいたり
けれどわたしのへやのしづかさは
まるでふかいうみそこのやうだ
きふすもちやわんも
ごろごろそこらにころがつたなりで
みんなぐつすりねむつてゐる

ぐつたりとつかれて
あほむけにひつくりかへつたわたしのそばで
ほそぼそと
ひばちのうへのてつびんが
なにやらうたをうたひはじめた

ゆびをくむにはくんだけれど
さてどんなことをいのつたものか

かぜはいよいよはげしく
おそろしいけだものでもほえるやうだ
とはいへわたしのへやばかりは
ひつそりと
てつびんがみゝずのやうにうたつてゐる

どうぞこのまゝねかしてください
またあたらしいたいやうのでるまで

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