ハコベ

はこべ@日比谷公園

春は 花壇のはしから――
まだ咲かない 植えられた苗の脇で
5対《ごつい》の 短い花弁《はなびら》を咲かせる

私が見ていたのは 淡い壁
胸を塞いだ噴水
白い 猫が横切る
生まれたとき 何を思ったかなんて
いつの日に 歩き始めたかなんて
柔らかな土の先で それは
つぶやきを 縁《ふち》の石に残して
静かに 土の上から現れる

私の 冬は長い
土の上に一葉《いちよう》 そして一葉と広がり
その中に 5対の花弁がある
私の内《うち》に入ったのは 花弁
白く咲き誇っている 花弁
気付かれずに広がる 緑色の冬の先に
私の中の遠い 春の訪れがある

春は 花壇のはしから――
まだ咲かない 植えられた苗の脇で
5対の 短い花弁《はなびら》を咲かせる

 (2005.2.3)
 公園の広場の端で、咲いているハコベの花を見つけました。花だけでなく重なって生い茂る葉もとても小さいものです。白い花を近くで見つめると、花弁2つずつ対になっていて、5対の花弁になります。
この小さな春の咲き始めに気付く人は、春の訪れを持つ温かな心の人なのでしょう。